また観たくなる舞台・映画をゆるりと。

心に潤いをくれるミュージカルや映画などを観て感じたことを、思うままに。

宝塚歌劇月組『エリザベート -愛と死の輪舞-』

演じる役者が変わるたびに、違う角度で楽しめる名作

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大好きな作品。
宝塚歌劇版の観劇は、4年前の花組と2年前の宙組に続き3回目。

こんなに本物の少女らしいシシィは初めて!と思うほど
愛希れいかさんのシシィは私の理想像でした。
かわいい。純粋な少女だと、一目でわかる。
フランツが見初めるのも納得。
成長した大人のエリザベートも丁寧に演じ分けられ、
改めて俳優さんとは、全身と魂を使った表現者なのだと実感しました。

珠城りょうさんのトートは、クールで骨太。
個人的には明日海りおさんの色気あるトートが好みだけど
珠城さんの抑えた感じ、エリザベートが主役になるような配慮にも見える。

美弥るりかさんのフランツ・ヨーゼフの落ち着きぶりも素敵。
ザコンというより、それが彼の「普通」のことなのだと自然に感じられる。
だからこそ「皇帝とはこういうものだ」と何度かシシィに語るときの説得力が増す。

月城かなとさんのルキーニは、ダンディさがある。
彼もまた、トートと同じで幕開きからずっと年をとらない。
奇妙な役を、ひょうひょうとこなさなくてはいけない。
実力のいる役を確実に演じている印象。
さらなる成長が楽しみな役者さんだと感じました。

見るたびに同じセリフや歌詞が心に響きます。

生きてさえいれば自由になれるエリザベート
生きる意味を見つけてしまった(トート)
私の人生は私のものエリザベート
死は逃げ場じゃない(トート)

エンターテイメントは、生きる活力をくれる。
だから劇場に行きたくなる✨
 

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マシュー・ボーンのシンデレラ

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プロコフィエフ作曲のバレエ音楽「シンデレラ」を、
演出家で振付家のマシュー・ボーンが手掛けた舞台。
世界初演は20年前。2010年に改訂版が作られ、2017年に再演。
今も世界中で上演が待ち望まれている。
日本初上演。

バレエ「シンデレラ」とも、もちろんディズニー映画ともまったく違う。
舞台は、明日はどうなるかわからない戦時下。
それでも、人々は怖がってばかりいるのではなく、
音楽を楽しみ、今を楽しみ、どんなにつらくても愛や希望を忘れない。
戦時中の人々と、不遇のシンデレラを重ねた演出。


当たり前なんですが、セリフや歌は無い。あるのは音楽とダンス。
でも、ほんの少しだけ、予備知識を頭に入れておけば、
すんなりと舞台世界に入れる。
人間が身体の全てで表現する芸術。
バレエの舞台を観たことのない私には刺激的。
第一幕の冒頭から、この先どうなるのかと思いながら見守り、
シンデレラが舞踏会へのチケットを手に入れたときの笑顔に
心からうれしい気持ちがあふれてくる。
この笑顔があるから、二幕、三幕への感動につながる。


魔法使いではない。男性の天使。
いつでも手助けするわけではない。
どんな人間でも「生きよう」とする者を助ける。

この天使の存在感たるや。圧倒的に素晴らしい。
彼のダンスを観ていると、涙が出そうになる。
魔法で助けてくれなくても、
彼が心に寄り添ってくれるからこそ誰しも希望を手にできる。
そう見えました。

シンデレラと一緒にドキドキし、ソワソワし、喜び、悲しみ、感激する。
最後はとても穏やかな気持ちになれる。
ため息が出るとは、このことかと。
なんてロマンチックな作品なんでしょう♡

マシュー・ボーン演出作品の観劇は
メリー・ポピンズ」(日本版)に続きまだ2作目。
来年の夏には再び「白鳥の湖」が来日するそう。
過去の作品も、いろいろ観たい衝動に駆られました。

 

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宝塚歌劇 花組『MESSIAH』

ミュージカル
『MESSIAH(メサイア) −異聞・天草四郎−』
 
幕府の圧政とキリシタン弾圧に苦しめられている
弱き農民たちのメサイア(救世主)、
天草四郎時貞を明日海りおさんが演じる。
 
明日海さんの天使感といったら!!!
期待以上の凛々しさはもちろん、
ほわっと包み込む優しさがにじみ出ている。
彼女にしか出せないオーラ。 
 
悲惨な境遇の農民と、それはおかしいから立ち上がろうと鼓舞する四郎。
四郎は、この舞台では特別な才能は見せないし、魔法のような奇跡も起こさない。
強いて言うなら剣術に長け、外の世界を知っているくらい。
それでも明日海さんが演じる天草四郎には、
民衆がその言葉を信じてついて行く。
その様子に何の違和感もない。吸引力がある。

死んでから幸せになるために我慢して生きるのではない。
いまを幸せな場所にできるのは自分たち。
神は自身の心に宿っている。

こんなにも頼もしく、優しいメサイアに出会えたら
運命を共にしたいと、きっと思う。
それが生きるよろこび。
宝塚作品は、押しつけは一切ない、あくまでエンターテイメント。
それでいて、ただの娯楽ではなく
生きることのすばらしさのエッセンスを軽やかに受け取ることができる。
お芝居で切ない気持ちになっても、ショーで明るくなれる安心感がある。

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ショー・スペクタキュラー
『BEAUTIFUL GARDEN −百花繚乱−』
 
ゴンドラ降りの美しさにノックアウトされ
あの不敵な笑みに魂をもっていかれる。
闘牛士グラディエーター
アイドルユニットHANAOTOKO
宝塚らしいなんでもありの世界。
 
終盤、卒業公演かと思うような歌詞に涙が出そうになる。
本当に宝塚大好きで、トップスターに上りつめられた一人、
明日海さんの輝かしい人生が凝縮されているかのような歌……。
トップになった以上、いつかどこかで
必ず退団される日が来ることをファンも覚悟しなくてはならない。
その刹那的な世界だからこそ輝いて見えるのだけど。
 
ずっとこの世界を見ていたいと、ひしひしと感じました。

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ディズニー/ピクサー映画『インクレディブル・ファミリー』

誰もが、人生の主役なのだと教えてくれる 

 

14年前に公開された『Mr.インクレディブル』の続編。

これだけの長い期間が空いたのに、

インクレディブル・ファミリー』は前作の直後のお話、

という設定もユニーク。

 

なにより、ストーリーが秀逸。

父、母、姉、弟、ベビー、5人家族のみんなが主役。

それぞれの立場がとても巧妙に描かれています。

特殊なパワーを持ち、街の平和を守るスーパーヒーローでありながら

普通の人間としてそれぞれの悩みを持ち、

信頼し、信用し、協力し、反発や不安もあるなか、

ありがちな家庭の問題も解決していく。

 

そのなかで誰か明確な主人公がいるわけではなく

みごとに家族全員が大切な登場人物として描かれている。

そこに、いちばん心をつかまれました。

 

加えて、仲間のスーパーヒーロたちも

誰が重要で誰がにぎやかしなのか、わかりやすい。

「前作にいたあの人は出てこないの?」と思ったキャラクターも

ここぞという場面で登場してくれる。

 

観終わったあとの爽快感といったら!

 

 

 

以前、テレビのドキュメンタリー番組で

スタジオジブリ宮崎駿さんが

「自分が好きだった映画は、ストーリーで好きになったんじゃない。

ワンショットを観た瞬間に、これはすばらしい…って。

それが映画だと思っているから」と語っておられ、

アニメーターとしての視点に深く共感しました。

 

だからこそ宮崎さんが

もし『インクレディブル・ファミリー』をご覧になったら

どのような感想を持たれるのか…と、心から興味がわきました。

この感覚、自分の中でとても大切なものに思います。

大事にして、覚えておきたい。

 

www.disney.co.jp

 

映画『フジコ・ヘミングの時間』

ピアノに癒され、言葉に励まされる

約2年かけピアニスト、フジコ・ヘミングさんを追った
ドキュメンタリー映画ですが、
彼女の人生を巧みに振り返りつつ
今のフジコさんが在ることをシンプルに伝えてくれます。

60代後半でピアニストとしてデビューされ
“遅咲きのシンデレラ”と騒がれてから早や20年。
苦労は糧になり、信じればいつか叶う、
そのために必要なものは
自分を信じ続ける心なのだと教えられました。

ーー自分の生き方は自分で決める

ーー天使に試されているのかもしれないから、
困っている人や動物に手を差し伸べることは当然のこと
 
いまの自分に自信が持てずにいる人の背中を
やさしくさすって、

歩みを見守ってくれるような作品。

繰り返し観て、彼女の「言葉」を正確に記したい衝動に駆られました。

 

fuzjko-movie.com

宝塚歌劇 雪組『凱旋門』

パリで難民として暮らす若者の生き様

 

ミュージカル・プレイ

凱旋門
エリッヒ・マリア・レマルクの小説による-

 

凱旋門』のストーリーはとても暗く、

ナチスが政権についた頃のドイツから逃れ

パリで難民として暮らす若者たちの生きづらさが描かれていました。

 

今の時代だからこそ、

この日本でも“難民”という言葉や差別について

「自分には関係ないわ」と聞き流さず、考えることができる。

 

お芝居として見ると、宝塚のみなさんは

きらきらとまぶしすぎて……。

それでもこの作品を上演されることで、

まったく知らなかった『凱旋門』という作品に触れられる。

 

知識ゼロだったので少し調べてみると

1948年に映画が作られていました。

ヒロインを演じたのはイングリット・バーグマン

でも、レマルクは執筆時

当時の恋人マレーネ・ディートリッヒをイメージしたそう。

彼女の出演作をいろいろ見たわけではないけれど

ビジュアルはよく知っている。

ディートリッヒなら、ラヴィックが恋に落ちるのも納得。

思わずため息……。

 

あとは、雪組トップスター望海風斗さんの演技を

もっと観られたらもっとうれしかったな。

  

ショー・パッショナブル
『Gato Bonito!!』
~ガート・ボニート、美しい猫のような男~

 

打って変わって陽気なステージ。

宝塚歌劇の最大の魅力だと私が感じているのは、

1幕でどんなにしんみりしても、劇場を出るときには

必ず笑顔になれるところ。

 

しかもラテンのリズムって大半の日本人は大好き。

なぜかしらと考えてみたことがあって、

出した結論は

「日本人には夏祭りの血が流れている」から。

全国各地、さまざまなお祭りがあるかと思いますが

あの独特な熱気の虜になる人は多いのでは。

 

舞台で歌い踊る生徒さんたちの楽しそうなこと!

人がはしゃいでいる姿は、見ているほうもワクワクするもの。

休憩時間までの

あのしんみりした空気はなんだったのかと。

このギャップがたまらない。

 

kageki.hankyu.co.jp

劇団四季「キャッツ」

日本にミュージカルを根付かせた作品

 

35年前から、ほぼ途切れることなく

日本のどこかで上演されて続けている

ミュージカル「キャッツ」。

 

数百回も観ているファンが多いという

驚きの作品ですが、私は2004年の東京・五反田公演が初観劇。

今回の東京・大井町公演でやっと4回目。

 

それでもこれまでに拝見した舞台から

私でも気づくほどの演出変更が何ヵ所かに見受けられました。

 

以前の「マンゴジェリーとランペルティーザ〜泥棒猫〜」が

好きだっただけに、

ちょっぴり残念な気持ちになったことは否めない。

けれど、それ以上に全体を通して

作品の楽しさに引き込まれ、気持ちの高まりを感じました。

 

初めて回転席に座る夢が叶い、

舞台の振動が座席までこんなにも伝わってくるのかと

驚きながらの観劇。

まさにアトラクション!

幻想的なキャッツ・シアター内を自由気ままに動き回る

猫たちの神秘的なことといったら。

 

今回、いちばん響いたのは「猫には3つの名前が必要」なこと。

常連さんには当たり前のことかと思いますが

ほぼ初心者の私は、改めて衝撃を受けました。

 

家族が毎日使う、普通の名前

猫が誇りを保つための、特別な呼び名(作品のキャラクター名)

人間様には思いもつかない名前。猫も決して明かさない

 

「名は体を表す」ということわざの通り、

名前は人生に大きな影響を与えると思っています。

でも、特別な呼び名と、決して明かさない名前への憧れもある。

 

私は、両親がつけてくれた本名をとても気に入っています。

ただ、このブログはプライベートをお見せするものではないので

別のハンドルネームで始めることにしました。

 

でも「自由に名前をつけられる」となると、すごく難しい!

24匹もの猫に魅力的な名前をつけたT.S.エリオット氏は偉大です……。

 

www.shiki.jp